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和紙の産地①

2022.11.17 | NEWS | コラム

日本が長い鎖国から開国し、ペリーをはじめとした外国人が来日した際、本国への報告で「日本は木と竹と紙の生活文化」との紹介があったそうです。また、江戸末期に来日したオイレンブルク(プロシアの初代駐日大使)の記した『日本遠征記』では、「紙の用途のこの国より広いところはおそらくどこにもないであろう」との紹介文があります。

歌舞伎や相撲、書道、茶道など日本文化のほとんどは和紙と密接な結びつきがあり、扇子・団扇・便箋や封筒・葉書などにも和紙が使われています。かつては紙衣(かみこ)と呼ばれる、生漉(きず)きで腰の強い和紙を糊で張り合わせたものを冬物の着衣として着る地域もありました。奈良の東大寺二月堂の修二会(しゅにえ)では、軽く保温性に富み、古代から僧衣として用いられた紙衣を、今日でもその伝統を継ぎ、着用しているようです。

和紙の生産業者は、1901年の農務省統計で記録された68,562戸が最高戸数と以前のブログでも紹介しましたが、それだけ多くの種類の和紙が作られていました。今回は代表的な和紙の産地をご紹介していきます。

ユネスコに登録されている3つの和紙

2014年、日本からの提案を受けユネスコは、「和紙 日本の手漉き和紙技術」を無形文化遺産に登録しました。登録された和紙は、原料に「楮(こうぞ)」のみが使用されており、伝統的な技法を用いて作成されるものになります。また、保護措置として,伝承者養成,資料収集整理,品質管理,原材料用具確保,和紙制作技術研究を目的とした各事業を実施することも含まれます。この条件で登録されているのが、「石州半紙(せきしゅうばんし)」(島根県浜田市)と「本美濃紙(ほんみのし)」(岐阜県美濃市)、「細川紙(ほそかわし)」(埼玉県小川町、東秩父村)の3つの和紙になります。

 

石州半紙(せきしゅうばんし)

石州半紙は,島根県西部の石見地方(石州)に伝承されてきた楮和紙の製作技術である。岩見半紙とも言われ、奈良時代に柿本人麻呂が民衆に製法を伝えたとの説もあります。石見国では10世紀初めに製紙が行われ,江戸時代には,石州で漉かれる半紙という規格の紙が大坂商人たちの帳簿用紙として重用され,石州半紙の名が広まった。現在は,主に,障子紙や書画用紙として用いられている。3年間育てた楮を原料に用い,我が国特有の「流し漉き」 と呼ばれる製紙技法で紙を漉く。石州半紙の最大の特色は強靱な紙質であり,これは,楮のあま皮を残して用いる独特の原料処理方法に代表される,自然の素材を生かす伝統技法によって生み出される。その製造技術は1969年に国の重要無形文化財に指定され、1989年に国の伝統的工芸品に指定されました。

石州和紙会館

本美濃紙(ほんみのし)

本美濃紙は,岐阜県美濃市蕨生地区に伝承されてきた楮和紙の製作技術です。美濃の地域では早くから紙が漉かれ,大宝2(702)年の美濃国の戸籍用紙が正倉院に残ります。江戸時代以来,本美濃紙は,最高級の障子紙として高く評価されてきました。現在は,主に,障子紙のほか文化財保存修理用紙として用いられています。入念な手作業で原料処理を行い,不純物をよく取り除いて楮の繊維のみを用い,良質な製作用具を使用して我が国特有の「流し漉き」で漉き,板に貼りつけて天日乾燥する。紙漉き操作は「縦ゆり」に「横ゆり」を加え,左右方向にも用具を動かして漉くため,繊維がむらなく整然と広がり,美しく漉き上がります。本美濃紙は1969年に国の重要無形文化財に指定されています。

美濃手すき和紙協同組合

細川紙(ほそかわし)

細川紙は,埼玉県比企郡小川町及び秩父郡東秩父村に伝承されてきた楮和紙の製作技術である。江戸時代,紀州(現在の和歌山県高野町)の細川で漉かれていた細川奉書の製作技術が,大消費地であった江戸に近い武州男衾(ぶしゅうおぶすま)・比企・秩父3郡に伝えられて盛んになりました。和歌山での生産は現在途絶しています。小川和紙の一つとしても考えられ、埼玉県比企郡小川町および秩父郡東秩父村で生産される和紙です。細川紙は,商家の大福帳などの帳簿用紙や記録用紙,襖紙などに用いられ,江戸の庶民の生活必需品として重用されました。現在は、主に,和本用紙,版画用紙,文化財保存修理用紙として用いられています。 細川紙の製作技法は,楮のみを原料に用い,我が国特有の「流し漉き」で漉くものであり,漉き上がった紙は,紙面が毛羽立ちにくく,強靱な性質をもっています。1978年、国の重要無形文化財に指定されています。

細川紙技術者協会

上記の和紙産地では、ユネスコへの提案内容に基づき、伝承者養成も行っております。各々独自の協会を設立し、会員・準会員・研修生たちが技術の伝承活動を行っております。技術・伝承者養成以外にも品質管理、原材料用具確保、和紙制作技術研究などの各事業も実施しています。

 

日本三大和紙

先ほど紹介した岐阜県の美濃和紙に、福井県の越前和紙、高知県の土佐和紙を加えて日本三大和紙と呼びます。良質な石灰や原料が豊富にとれたこと、製紙業に必要な清らかな水に恵まれていたことが、発展の理由と言われています。

美濃和紙(みのわし)

先ほど紹介した本美濃紙はユネスコに登録された和紙でいくつかの制約の中で製造されたものを指します。

美濃和紙は、その制約に縛られず、機械で漉く和紙を含め、岐阜県美濃市で作られた和紙全般のことを指します。美濃和紙の魅力は、柔らかみのある繊細な風合いを持ちながら、強靭で耐久性があり、薄くムラがないことです。障子紙や表具用紙など伝統的なものから日常品まで、様々なものに用いられています。さらに、日本国内のみならず、世界各国で古文書や絵画など国宝級の文化財の修復に使用されています。現在は、厳しい品質基準を設定し、その基準をクリアした、高い品質を保つ製品に美濃和紙のブランドマークを付与するなどの活動も行われています。美濃和紙は1985年に国の伝統的工芸品に指定されています。

 

越前和紙(えちぜんわし)

日本に紙が渡来した4~5世紀頃には既に越前和紙が作られていたと言われており、今から1500年程前、この村里の岡太川に美しい姫が現れて紙漉(す)きの技を教えたと伝えられています。奈良時代には、仏教の経を写すための写経用紙として重用され、その後、紙漉きの技術、生産量も向上して「越前奉書」等高い品質の紙が作られるようになり、紙の産地として幕府や領主の保護をうけて発展しました。現在では一般的となった奉書紙ですが、その由来は中世武家社会において、主君が臣下に出す命令や伝達を近侍者がしたためて発行した「奉書」という書式にあります。この「奉書」の公用紙として最もよく使用されていたのが越前和紙です。越前和紙の特徴は原料に楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)を使用し、それぞれの特徴にあった和紙をつくりあげるところです。1976年、国の伝統的工芸品に指定され、2008年には特許庁の地域団体商標に登録され、権利者は福井県和紙工業協同組合となります。

福井県和紙工業協同組合

土佐和紙(とさわし)

平安時代の延長5(927)年に完成した「延喜式」の中で、国に紙を納めた主要産地国として土佐の名が登場しています。戦国時代、いの町成山で草木染めの技術を加えて開発された「土佐七色紙」は、土佐藩から将軍家への献上品として保護されることとなり、これによって土佐和紙の名が広く知られるようになりました。生産される地域は、土佐市、高岡郡、香美郡、長岡郡です。
土佐和紙の特徴は、種類の豊富さと品質の良さです。他の和紙と比べて薄くて丈夫であるということです。土佐典具帖紙など厚さわずか0.03mmの手漉き和紙は、世界でも類を見ません。1976年、国の伝統的工芸品に指定されています。

高知県手すき和紙協同組合

和紙印刷の注意点

今回ご紹介した産地の和紙は必ずしも印刷できるものとは限りません。厚みや風合いなど様々ですし、印刷適正がないものもあります。また手漉き和紙など供給量が少ないので、流通量が多い商品のラベル、取説などには安定供給の面から使いづらかったりします。手漉き和紙のご希望がある場合は、事前に確認することをお薦めいたします。

 

和紙印刷なら当社におまかせ!

当社は大正10年に創業し、米どころである新潟県柏崎にて、日本酒ラベル、和菓子のお土産品など和紙を利用する印刷物を通して印刷技術を培ってきました。

新たに和紙を利用した印刷物の作成をお考えであれば、ぜひ和紙の印刷工房にお任せください。豊富な実績と培った技術で、理想の仕上がりを形にします。

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