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紙の歴史と和紙について

2022.08.18 | NEWS | コラム

紙(paper)の語源として知られるパピルスは、古代エジプトでパピルスという草木の茎の繊維を縦横に重ねて作られたもので、BC3000年代からAD1000年まで書写材料として利用されました。

小アジアからヨーロッパに至る地域では、紀元前2世紀頃に発明された、動物の皮を利用した羊皮紙(パーチメント)も同様に書写材料として普及し13世紀から15世紀にかけて中国から紙が伝来するまで使用されました。

材料や製法を考慮するといずれも現代の紙の定義にはあいませんが、情報を伝える記録媒体として使われてきました。

現在使われている紙に繋がる世界最古の紙は、中国甘粛省の放馬灘(ほうばたん)で発見された地図の描かれた麻の紙で、紀元前189年頃から紀元前141年頃のものと推定され、放馬灘紙(ほうばたんし)と呼ばれています。その後、西暦105年頃、中国の役人である蔡倫により紙の製造方法が確立したとされています。この製紙法の確立により、使いやすい実用的な紙がたくさん作られるようになっていきます。

それでは、日本ではどのような紙の歴史をたどるのでしょうか?

 

日本における紙の歴史

製紙技術の伝播

「日本書紀」によると、610年頃に高句麗の僧である曇徴が紙を作り、との記載があり日本における製紙の最初の記録とされています。

和紙の産地である福井県では、さかのぼること1500年前、現在の越前市岡太地区を流れる川の上流に現れた女神が、村人に紙漉きの技術を教えたことが越前和紙の始まりと言い伝えられています。

紙そのものは外交文書や私用のお土産として、すでに古墳時代に中国から朝鮮半島を経て日本に伝わっており、記録にはないが渡来人の手により日本のどこかでより早い時期に製紙が行われていたとの考えもあります。

古代中国では溜め漉きという製紙技術が発明され日本を含め世界に伝播し、日本では9世紀初頭に流し漉きという、独自の手漉き製紙技術が確立したとされており、楮や雁皮などを主な材料とし製造していました。1874年に国内最初の機械漉き洋紙を有恒社が製造するまで、和紙製造は機械化されず人の手により続けられてきました。

 

紙の需要が増えるきっかけ

紙が作られるようになった5~6世紀頃は、大陸の文化や技術交流が盛んとなり、漢字・仏教普及の影響で写経が始まり、律令制の整備に伴い徴税の為の戸籍が作られ、紙の需要が増すきっかけとなりました。

国内最古の紙は、正倉院に伝わる702年の美濃・筑前・豊前の戸籍用紙であり、また制作年が明確な、世界最古の現存印刷物である百万塔陀羅尼は、100万基の木製小塔に、陀羅尼経を納めたものであるが、770年当時にそれだけの製紙能力があったとみられる。

ちなみに紙の寿命について「洋紙100年、和紙1,000年」と言われますが、百万塔陀羅尼の保存年度がその言葉を裏付けています。ただ、現在では材料や漉き方も変わっており、和紙全てが同様の強度を持っているとは言えません。

806年、京都に官営製紙所である紙屋院が設けられ、宮廷用紙を漉いて研究を行うとともに、全国の製紙の指導的役割も果たしました。

その後、室町時代には書院造の流行で襖障子や明かり障子に用いる紙の需要が増し、江戸時代には各藩が財源の一つとして製紙を奨励し、文化面でも瓦版、浮世絵、かるたなどを通して庶民の暮らしへ浸透していくことになります。

1901年の農務省統計では、和紙の生産業者は最高の68,562戸を記録するがその後は減少の一途を辿ることになります。

 

和紙の製造技法

手漉き和紙

19世紀に洋紙の機械漉き製造技術が導入されるまで和紙の製造方法は手漉きのみでした。手漉きの手法も溜め漉きと流し漉きの2種類があります。溜め漉きは古代中国から伝わった手法であり、流し漉きは奈良時代から平安時代の間に、とろろあおいの根の部分から採れる「ねり」という粘液の発見とともに開発された日本独自の漉き方です。

機械漉き和紙

いずれの手漉き手法も現代でも生きていますが、近代になり西洋から機械漉き技術が導入されると、製造業者の減少や生産効率を上げる必要性に迫られ和紙作りにもその技術が応用され機械漉き和紙がうまれました。和紙特有の複雑な繊維の絡みは再現が難しく、洋紙より長い繊維は抄紙機に詰まってしまうなど難点もありましたが、横揺りを加えた高岡式と呼ばれる懸垂式短網抄紙機の開発により、手漉き和紙とは風合い、強度などが異なる機械漉き和紙の製造が可能となりました。

和紙の無形文化遺産登録

2014年に日本の手漉和紙技術が工芸技術の分類でユネスコの無形文化遺産に登録されました。登録対象は、石州半紙(島根県)、本美濃紙(岐阜県)、細川紙(埼玉県)の3種です。登録の要件は、「楮のみを用いた、伝統的な製法による手漉き和紙の製作技術」が伝統工芸技術として提案され、加えて伝承者養成、資料収集整理、品質管理などの実施も併せて評価されました。

手漉き和紙、機械漉き和紙と製造方法をご紹介しましたが、機械で漉いたら和紙ではないのでは、と考える方もいらっしゃるかもしれません。実際、和紙の定義は業界内でも定まっていないのが現状です。ユネスコに登録された技術だけを使って漉いたものを和紙とすると範囲が狭すぎますし、機械漉きの中には和紙の風合いが感じにくいものもあります。そもそも機械漉き和紙の為に開発された懸垂式短網抄紙機は昭和36年、高知にある高岡丑製紙研究所の高岡丑太郎氏の手により成功し、歴史としては60年を超える程度です。1,000年を超える和紙の歴史の中で考えると短いですが、その開発背景にはそれまでの和紙の歴史が詰まっています。

機械漉き和紙の抄紙機が開発された高知は国内の三大和紙のひとつに数えられ、平安時代に書かれた『延喜式』にも献上品として登場する、歴史のある土佐和紙の産地です。抄紙機の開発には県の紙業試験場も関わり、開発には何年も掛かりました。楮の繊維の結束をほどき、均質な紙の層を造る機械の仕組みは高いハードルでしたが、一つずつ技術的なハードルを乗り越え特許を積み重ねた結果、楮で極薄の典具帖紙を抄く機械の開発という成果に繋がりました。

手漉き和紙生産業者は、西洋の機械漉き技術や洋紙の流入、国の政策変更、生産の不効率性、高齢化など様々な理由で減少してきましたが、機械漉きの技術が発展したことで和紙の歴史は続いています。

 

和紙の原料

古くから和紙の原料には、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)の3種類の植物が使われてきました。いずれも繊維が長く強靭で、薄くて強い性質を併せ持っています。一方で洋紙は、針葉樹・広葉樹の木材を原料とし、機械的・化学的に処理した短い繊維を利用して作られます。

楮はクワ科の落葉低木で、成木は3m余りになり、栽培が容易で毎年収穫ができます。繊維は太くて長く強靭なので、障子紙、美術紙、表具用紙など幅広い紙に使われています。紙の原料となる以前には、その強靭な繊維は物を縛る結束の材料として用いられました。また楮繊維を糸に紡いで布も織られていました。

江戸期には楮皮で漉かれる紙は高価に取引されるところから、藩財政を豊かにする貴重な財源と評価され、西日本の各藩は競って紙を藩の専売品にしました。

三椏

三椏は日本に自生する樹木ではなく、中国南部やヒマラヤ地方原産のジンチョウゲ科の落葉する低木植物で、渡来時期は未詳とされています。成木は2m余りになり、苗を植えてから3年ごとに収穫できます。

日本で初めて三椏が紙として使われ始めたのは室町時代後期頃の静岡県東部で、文書では伊豆国の修善寺がはじまりとされています。

明治新政府は、当初紙幣用紙の原料に雁皮をあてたが、原料供給に限界が認められた為その使用を断念。代わりに三椏に目をつけ、越前の紙漉き職人の協力のもと紙幣用紙にすることに成功します。その後現代に至るまで三椏は紙幣用の紙として重宝されています。

雁皮

雁皮はジンチョウゲ科の落葉低木で、成木は2m余りになります。いわゆる雑木林や松林の痩せた土壌に成立している森林の低木層を構成しています。

雁皮の樹皮で漉かれた紙は、温度や湿度の変化にも強く、紙肌がなめらかで、しかも丈夫で紙魚(しみ)に食われないので保存性に富んでいます。すぐれた和紙原料ではあるが、栽培が困難なので自然に生育しているものを採取しなければならない。江戸期の終わり頃から明治初期には、良質な雁皮を産した和歌山県熊野地方では、一定期間雁皮の採取を禁止し、良好な雁皮の皮を生産するため地域の村々が一致して実施していたところもあった。

 

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当社は大正10年に創業し、米どころである新潟県柏崎にて、日本酒ラベル、和菓子のお土産品など和紙を利用する印刷物を通して印刷技術を培ってきました。

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その他のお問合せ

 

参考資料

・ものと人間の文化史 181 和紙植物

・和紙の里 探訪記 ―全国三百カ所を歩く

・すぐわかる 和紙の見分け方

・株式会社竹尾HP https://www.takeo.co.jp/

・株式会社オオウエHP http://www.ooue.co.jp/

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