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極小ロットはこれで解決?大判インクジェットで和紙印刷をテスト

2025.04.11 | 制作と入稿

オフセット印刷では難しい極小ロットの和紙印刷

意外にお問合せが多い大判の和紙印刷ですが、1〜数枚程度の極小ロットである場合は価格の折り合いがつかずお断りすることがほとんどです。価格を度外視すればオフセット印刷で対応できますが、なかなか難しいのが現実です。

しかし、より多くの方に和紙の魅力をお届けしたいと考える和紙の印刷工房では、オンデマンド印刷に分類される大判インクジェットプリンタを用いた和紙印刷に対応する予定です。大判インクジェットを製造に用いた実績もございますが、さらに魅力的な和紙印刷をご提供できるよう本格的な準備を進めています。

そして今回は、新たなサービスの糸口を探るために『和紙の単票紙(ペラの紙)』で大判インクジェットのテストを行ないました。

《インクジェット向けロール和紙の出力テスト記事はこちら》

和紙の特性で不安のある発色や滲み具合は?

テスト使用画像→プリント用にCMYK変換して使用しました。

 

インクジェットプリンタの仕上がりはトナー(粉状の着色材料)方式の印刷に比べ「やや滲み(ボケ)を感じる」と言えますが、通常はインクジェットに適した専用紙※を使用するためほとんど気になりません。
※厚手光沢紙やフォトペーパーなど印刷適正を高める処理がなされた用紙。多くの場合ではロール状。

しかし、和紙の場合では手触りや風合いが魅力である反面、印刷適正を高める処理がされていないため滲みや色の沈みが出やすいと言えます。

そこで前回のインクジェットプリンタ向けの「ロール和紙」を使用したテストでは、仕上がりをアップさせるため以下2種類のデータを出力、比較しました。

(1)通常の調整→通常の出力や製版作業と同等の調整データ
(2)インクジェット用調整→発色アップと滲み対策の調整をしたデータ

前回:通常の調整 前回:インクジェット用調整

 

結果としては、全体的な濃度はやや物足りないもののデータを調整することで、沈んだ色味が改善され滲み(ボケ感)も抑えることができました。

とは言え、もっと印刷品質をアップさせたいのが本音です。

現状、当社在庫のロール和紙は前回テストの1種類のみ。
様々な和紙のインクジェット適正を確認するためにも、まずは和紙の単票紙に前回と同じデータを出力してみることにしました。

用紙は雲龍紙(四六判90kg)の半裁サイズに2面付で出力しています。

通常の調整(上)/インクジェット用調整(下)

 

今回も和紙であることは変わらないため、発色や仕上りには期待できないのでは…という予想を裏切って、思いのほか発色もよく滲みも少ないように感じます。
スミや濃い色の部分も発色不足による白っぽさを感じさせません。

通常の調整(拡大)

 

画像由来の柔らかさは感じますが、滲みを感じさせない自然な仕上がり。元画像に比べて抑えられてはいますが発色も悪くありません。
背景部分には雲龍紙の繊維を感じ、和紙の持つ特徴や風合いも損なわれていないのではないでしょうか。

インクジェット用調整(拡大)

 

インクジェット用調整では、仕上がりをアップさせるための調整内容(全体の粒感)が再現されています。
この結果から滲みの抑えられた仕上がりであることがわかります。
インクジェット用調整はシャープさを求める場合に様子を見て行う程度でよいかもしれません。

単票紙テスト 雲龍紙とむつき

テスト使用画像→プリント用にCMYK変換して使用しました。

 

和紙の違いによる仕上がりの違いも見てみました。
使用した和紙は雲龍紙(四六判90kg)と、むつき(四六判90kg)、どちらも半裁サイズを使用しています。

むつきはクリーム色がかった色合いのため、印刷内容に和紙自体が持つ色が影響しています。
印刷結果については、こちらも色の沈みや滲を感じさせない仕上がりです。

雲龍紙

 

むつき

 

淡い色合いやカラフルな内容もテスト

淡い色や鮮やかな色、グラデーションの様子を見るためのサンプルを制作してテストを行いました。
用紙はこちらも雲龍紙(四六判90kg)の半裁サイズを使用しています。

サイズ内に様々なサイズで画像を配置したサンプルですが、どの画像もきれいに再現でき、雲龍紙の特徴的な風合いもマッチしています。

サンプル全体

 

ブルーからピンクのグラデーションもなめらかです。

 

背景の淡いグリーンや女性の生え際の繊細な部分も再現できています。目や頬のかなり薄いピンクもきれいです。

 

H135×W200mm程度と小さめのサイズですが、建物の細かい部分まで印刷されています。

 

左画像の着物や帯の柄、右画像の淡い色調、紙端の色玉ともに十分再現できています。

 

淡い色調や繊細な着物の柄、女性の着物の赤色は微妙な差まできちんと再現。

 

まとめ

今回ご紹介したテスト出力した「雲龍紙」「むつき」の2種類は、予想外に大判インクジェットの適正が高いと感じる結果でした。
イラストや写真、アートなど和紙を使った作品のアウトプット、ポスターや店舗内装まで様々なシーンで大判和紙のインクジェットプリントは活躍できるのではないでしょうか。

今後もテストを重ねて、様々な和紙を手軽に選んでいただけるサービスを作りたいと考えています。

大きな和紙を使った印刷物をお考えのお客様は小ロットでも諦めず、お気軽にご相談ください。

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